大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)4078号 判決 1952年3月07日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人和田正平の上告趣意(後記)第一点は刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。

同第二点について。

被告人の所論の如き一連の言動は、全体としてこれを見るならば、恐喝の手段たる脅迫行為にあたることはいうまでもない。そして、恐喝罪を犯したものを処罰することは国家の正当な刑罰権の行使であって何ら憲法の保障する基本的人権を侵害するものでないことは当裁判所の幾多の判例の趣旨に徴し極めて明かであって所論の違憲論は到底採用することができない。その他の論旨は適法な上告理由とならない。

なお、本件については刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。(尤も、原判決は控訴趣意第一点について「財物を交付させる手段として、他人を脅迫した者が、これを交付させるにつき正当の権利を有していたとしても、これがために脅喝罪(恐喝罪の誤記と認める)の成立を妨げるものではない」と判示したことは、なお論理を尽さない誤があるけれども、記録を精査すると被告人の本件行為は権利の実行としてなされたものとは認めることができないから、原判決が結局これに対して恐喝罪の成立を認めたことは正当に帰する。)

よって刑訴四〇八条一八一条により裁判官全員一致の意見を以って主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例